
Interview #05 | 幸生窯・前川幸市 “土のぬくもりから生まれる、小さな命のかたち”
信楽の森の中。鳥の声が響き、木漏れ日が差し込む工房で、前川幸市さんは静かに土と向き合う。猫や犬、小さな動物たちに息を吹き込むように、ひとつひとつ、丁寧に。生まれてくる作品は、どこかユーモラスで、そっと心に寄り添ってくれるような存在です。「思いを込めすぎないこと」。その静かな姿勢の先に、見る人それぞれの物語が広がる“余白”があります。今回は、猫たちと暮らし、土と向き合いながら“心豊かな暮らし”を紡ぐ、前川さんのものづくりを訪ねました。
-
Profile
陶芸との出会い、そして「幸生窯」という場所
薪窯の炎に心を打たれたことが、すべての始まりでした。
父が始めた工房を2017年に引き継ぎ、今は家族と猫たちとともに、この場所で制作をしています。信楽の素朴さ、あたたかさ。土地の持つ空気が、作品にも自然と染み込んでいる気がします。
動物たちに、形を与えるということ
犬や猫は、暮らしのすぐそばにいて、どんなときも見ていて飽きない存在。そんな愛おしいしぐさを、自分なりに形にできたらと思いながら、ひとつずつ手を動かしています。
大切にしているのは、自分の思いを強く込めすぎないこと。見てくださる方が、自由に感じ取ってくださるような“余白”を残すようにしています。
猫たちと暮らす日々に、作品の種がある
朝は猫たちの世話から一日がはじまります。身の回りの世話をして、気ままな様子を眺めてから、仕事に向き合う。時には膝にのってきたり、時にはそっと離れていたり…そんな彼らの自由さに、日々助けられています。暮らしと制作は、常にひとつながり。日常そのものが、作品づくりの土台になっていると感じています。
手に取ってくださる方へ
作品を通じて、どこかで誰かと繋がっている。そう思うと、とても嬉しくなります。動物たちが、それぞれの暮らしの中で“小さな幸せ”になってくれたら。その豊かな時間が、また別の誰かの日常にやさしさを届けてくれることを願っています。
幸生窯の3匹の看板猫たち
幸生窯の作品のなかでも、特に多いのが猫のモチーフ。それは、ここに暮らす3匹の猫たちの存在があるからかもしれません。工房に住む兄妹猫のキンゾウとチャロ、そして自宅のリビングでのんびり過ごすミーア。どの子も、偶然の出会いから家族になりました。今では、彼らのいない毎日は考えられないほど、大切な存在です。
家族の一員として活躍する猫たちの仕事は、工房周辺のパトロールから作品のモデル、お客様のおもてなし、さらには寒い日の湯たんぽ役まで多岐にわたります。
彼らを見ていると、陶の動物たちはまるで“後輩”のよう。どこかの暮らしの中で、やすらぎや笑顔を届ける存在になりますようにと願いながら、ひとつずつ心を込めて送り出しています。
信楽の森の中から届いた、素朴で美しい小さな命のかたち。
前川さんが紡ぐ作品には、土と暮らし、そして動物たちとの静かな対話があります。
&CATでは、そんな幸生窯の作品をお届けできることを心から嬉しく思います。
この子たちが、猫を愛する方の暮らしのそばで、そっと寄り添ってくれますように。
幸生窯さんの商品はこちら
小さな動物たち(小)、小さな動物たち(大)