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    My Cat, My Home #02 | 猫とデザイン、心地よく調和する暮らし。

    My Cat, My Homeの第二回は、愛知県在住のグラフィックデザイナー・飯島百合さん。東京で20年過ごしたのち、結婚を機に愛知県へ移住。2022年に新居を構え、旦那様と二匹の保護猫と暮らしています。家の空間づくりは流行に左右されず、ポストモダンやミニマルをベースにした飯島さんらしい世界観が貫かれており、その佇まいに憧れる人も少なくありません。今回はそんな飯島さんに、猫との暮らしや空間づくり、日々の選びと心の在り方について、お話を伺いました。「ミニマルでありながら、どこか温かい空気が流れる空間にしたい」——。猫たちとの距離感や空間づくりのセンスから、“猫と心地よく暮らす”ヒントが見えてきます。

保護猫と出会って、家が“暮らし”になった。

先代の黒猫を病気で亡くした後、喪失感のなかで市の保護猫登録をしていたところ、引き取りの連絡がありました。 兄弟猫たちがケージ越しに元気よく鳴く中、ひとりだけ母猫の陰にそっと隠れていた黒猫──その控えめな姿に、人見知りの私はシンパシーを感じて、PEEちゃんとして迎えることに。

それから約4年後。新居への引っ越しをきっかけに、知人から「保護した子猫を引き取れないか」と夫に声がかかり、写真を見た瞬間に一目惚れ。以前から憧れていたハチワレ柄ということもあり、LINOと名付けて家族に加わりました。

PEEとLINO、性格は真逆。でもどちらも愛おしい存在。

PEEちゃんは、ふだんは静かでおだやか。でもお腹が空いたときや遊びたいスイッチが入ったときには、びっくりするくらいはっきりと気持ちを伝えてきます。そのギャップがたまらなく愛おしいんです。

LINOはおおらかでお喋りな明るい性格。いるだけで場がパッと明るくなるような、太陽みたいな存在です。 姉のPEEちゃんとは真逆で、まさに“僕が一番!”なジャイアン気質。お気に入りの場所もごはんも、お姉ちゃんのものをちゃっかり奪ってしまうことも。そんな姿も、つい許してしまいたくなるような、憎めない存在です。

冬はぴたっと、夏はそっと。猫とのちょうどいい距離感。

うちの猫たちは、季節によって過ごす場所が変わります。 冬場は私たちにぴたっと体をくっつけてきたり、膝に乗ってきたり、ソファのブランケットに潜り込んだりして、常にそばにいる感じ。 猛暑の今はというと、日中は寝室のベッドの下へ避難して、ひんやりとした場所で静かに涼んでいます。 そのせいでリビングにはあまり姿を見せず、ごはんの時間にだけひょっこり顔を出してくるのがちょっぴり寂しく感じることもあります。

心地よく暮らしてほしいから、できることを全部。

2匹とも保護猫として迎えたのですが、外では決して快適とはいえない環境で過ごしてきた背景があるので、やっぱりできるだけ心地よく過ごしてほしいという気持ちは常にあります。 ごはんも、添加物や糖質の少ないものを選んでいますし、家にいるときはトイレも常にチェック。用を足したらすぐに片づけることも多くて、つい習慣になっています。

そぎ落とすことで生まれる、空間のリズムと抑揚。

物に溢れたにぎやかさよりも、そぎ落とされたミニマルなムードに心惹かれる。そんな空間づくりの中で、ポストモダンや海外作家などのアイテムをひとつ、ふたつ。自分軸で選び取ったアクセントピースを加えることで、空間にリズムと抑揚が生まれる気がします。

ポストモダンと聞くと、奇抜さや意匠性を連想する人もいるかもしれないですが、幾何学(直線、正方形、三角形など)を基礎とするその構造は、モダニズムとも親和性が高いと感じています。

リビングに隣接し、ガラスのパーテーションで仕切られたアトリエ空間は、あえてトーンを抑えたモルタル仕上げに。高窓(ハイサイドライト)から差し込む自然光が陰影を生み、静謐さと神聖さが共存するような空気感が、そこに置かれた家具の佇まいにより奥行きと存在感を与えている気がします。

心に響く“かたち”を、暮らしの中に。

Sophie Lou Jacobsenのガラス作品

ソフィー・ルー・ヤコブセンは、ニューヨークを拠点とするフランス系アメリカ人デザイナーで、機能性+詩的な美しさを融合したスタイルがお気に入りです。 ありそうでないその美しい世界観に惹かれ、気づけば、あれもこれもと集めていました。 NYから届いたときは、思わず顔がほころびました。

Ettore Sottsassのガラスオブジェ

エットレ・ソットサス(1917–2007)は、イタリアを代表する建築家・デザイナー。 モダニズム以降の潮流に新たな視点をもたらし、ポストモダンデザインの象徴的存在として知られています。 こちらのガラスオブジェは、都内〈YOU ARE WELCOME〉にて購入。季節や時間帯によって光が透過し、美しいプリズムを写し出すこともあってガラスの印象が変わるのも魅力です。

Lina Bo Bardiの椅子

リナ・ボ・バルディ(1914–1992)は、イタリアに生まれ、ブラジルを舞台に活躍した建築家・デザイナー。 この〈Giraffe Chair(キリンチェア)〉は、クラフトの温もりと建築的な構成美が見事に調和した一脚。 建築への深い敬愛を込めて、私がとりわけ惹かれてやまない椅子のひとつです。

距離感のやさしさに、癒されて。

猫たちと暮らすようになって気づいたのは、付かず離れずの絶妙な距離感が、私にとって驚くほど心地よいこと。 その穏やかな存在にふたりも囲まれている今、ストレスさえもふっとやわらいで、日々そのありがたさをかみしめています。

デジタルから離れて、猫と過ごす時間をたいせつに。

便利なスマホは、つい手が伸びてしまう存在。 気づけば画面の中の世界に没入してしまい、いつの間にか時間が一瞬で過ぎてしまうことに、どこか無駄にしてしまったような、後ろめたさを感じることもあります。 同じ姿勢で過ごすことで体にも負担がかかるため、意識的に“デジタルデトックス”を心がけています。

時間は有限。 だからこそ、その大切な時間をどう使うか、自分なりの答えを探しながら過ごしています。 そしてその暮らしに、猫たちの存在は欠かせない大切な一部なんです。

締めのことば

ふと目をやると、静かに佇む猫の姿。 その存在が、暮らしの空気をふわりと整えてくれる。 丁寧に選び取った空間と、大切な家族とともに過ごす日々は、 どこまでもやさしく、そして豊かです。

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