松原 圭士郎

& People_Interview 04

松原 圭士郎

Keishiro Matsubara

丸朝製陶所 4代目社長

Profile

家業である陶磁器製陶所の4代目としてこの業界に入り23年ぐらいが経ちました。幼少の頃から洋食器の良し悪しを肌で感じる環境だった。週末に百貨店行けば7・8階の食器売り場が一番滞在時間が長かったり、レストランではいつもプレートの裏側を見ている両親。 カップ&ソーサーを主力としていたメーカーなので小学生の頃からウェッジウッドやマイセン、ノリタケ、ジノリとか色々な柄と名前だけは知ってましたよ。笑 同業他社で2-3年ほどの修行を得て家業に入り、ずっとカップの成形技術を磨きました。 昔から好きなことには没頭するタイプでしたのでコツコツとやり続けることは得意な方だと思います。趣味の影響もあり幅広い視野で物事を捉えてきました。コーヒー、建築、釣り、バイク、サーフィン、文化、音楽など様々なことに興味があって時間が足りません。 好きな趣味が沢山あったからこそ、多くのお客様の要望を応えることができていると今では感じています。

岐阜県多治見市にある丸朝製陶所。そこの4代目社長 松原圭士郎さん。
ものの考え方、価値観などに共感し、&CATの器をこの方に頼みたいと思わせてくれた人です。
そんな人間的にも魅力的な松原さんに器のこと、美濃焼についてなど興味深いお話をいろいろと伺いしました。

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美濃焼の良さを教えて下さい。

美濃焼の良さは土です。世界に誇る有数の原料がこの地にはたくさん眠っているため、多種多様な陶磁器を作ることができる。これは世界に誇れることで、世界中探しても見つからない原料がここにはあるし、世界中で集めなきゃいけないものがここに集約されてることが美濃焼の素晴らしいところ。
だからこの地方には人間国宝の方が多く在籍していたり、作家さんからプロダクトを作れるメーカーもたくさんありますね。プロダクトも多種多様...大衆雑貨品から割烹・ホテルレストラン向け、薄利多売なものから付加価値があり高品質で高級なもの、土鍋・磁器・石器・ストーンウェア・土物いろんなものがある。そこまでカバーできる原料があることが美濃焼の特徴であり、素晴らしさ。
まさに土をデザインできるのは、日本中でも世界中でもこの場所だけだと聞いています。

いい土とは?

まず作り手にとって成形しやすいこと。可塑性があり、土に粘りや耐久性があって作りやすい。不良率も低いし、作り手にとって自分の作りたい形が作れる。
私たちが住んでいるこの東濃地方にはいろんな粘土や原料がありブレンドする技術があるから作り手や使い手に合わせて粘土、原料を作ることができる。そうするとその人の個性がすごく出るし、用途に合わせて粘土も変えたりとか、そこが強みかと感じています。

だから&CATの鋭利な角やシャープな形が作れるのですね。

そうなんです。磁器でも成形性が良い土があるから形も再現しやすい。また、他の生産地だと食器の雰囲気が同じものが多いですよね。信楽だと土の雰囲気、常滑なんか典型的で朱泥の赤っぽい急須のイメージ。私たちの器は多種多様な商品を作れることが強みです。日本全国にある全ての焼き物がここでは作れる気がします。各産地に行かなくても、この地域なら作れたりする。このような場所は世界中探してもないかも...
あれだけ広い中国ですら、こんな地域はないかと感じています。それが美濃焼の素晴らしさ。土をデザインできる場所はここにしかない。多様性があり、いろんなものが作れる。

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丸朝製陶所の歴史を教えて下さい。

創業1916年 松原朝一が創業しました。創業者の朝一から2代目の平太郎まで創業してからのほとんどの商品を貿易として海外に輸出していたんです。約50年間は北米やオーストラリア、中東中心に貿易輸出メーカーだった。主軸が洋食器でしたので磁器として作り、海外で使える食器を作っていた。そこからプラザ合意などの為替変動により、一気に貿易が止まり業績も悪くなった。販売先を国内にシフトしたが今度は中国製の輸入品が多く国内に入ってきてさらに業績悪化...薄利多売で白い食器しか作っていなかったのが原因だと思ってます。
代表になったのが7年前ですがそれ以前から少しずつ多様性を重視して、小ロットで色々な商品を製作できるようにして今に至ります。

陶器の磁器違いは何ですか?

簡単に言うと、陶器と磁器では原料に入っている粘土の割合が違うと思っています。陶器は粘土質の割合が多い、磁器は粘土分が少なく、鉱物の割合が多い。その割合がそれぞれの原料によって微妙に違いますね。
どこからが陶器でどこからが磁器か、決められた基準はなく曖昧。磁器と一言で言ってもその幅は広く、電子レンジや食洗機が使えない割れやすく耐久性の低い磁器もあるし、強度もあり業務用で使用できる耐久性がある磁器。でも全て磁器は磁器。
一応、数字で試験的に一定のラインをクリアすれば磁器として判別することはあります。陶器より磁器の方が割れづらいことは間違いない。
一般的には陶器は水を吸いやすく、割れやすくから電子レンジや食洗機に対応していない。丸朝は創業当時から磁器を作ってるメーカーです。

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&CAT製品を作る中で難しかったことは?

シャープさです。丸朝には様々なデザイナーさんからの依頼があります。頂く図面をみていつも思うことが、マーケットにないものを作ろうしているなーって。で、そのほとんどがシャープな形になりやすい。
そもそもなぜ世の中にシャープな食器が少ないかと言うと、作り手にとって不良率が高いからです。欠けやすく、ヒビが入り、取り扱いに注意が必要などなど
特に角はヒビが入りやすいため、通常は丸くしないといけないし、普段から気を遣う必要がありますよね。世の中にある器の角は丸いんです!でも、&CATは尖っている!見た目のかっこよさとデザインが重要!とのことで...涙
&CATの社長さんの熱い想いを形にしたいと思いました。

マットな色も難しいですよね...

マットもムラが出やすく大変。高さもあるし、形も独特だから釉薬のタレが出やすい。そこをいかにでないように釉薬を掛けるかが今でも苦労します。少しでも軽減できるように努力しますね。またどっしりと重量があるので施釉するときは手が痛くなり大変なんですよ笑(ちなみに専用の治具を作りました)

新作のTAJIMIシリーズについて言いたいことはありますか?

ひとことで言うと「無垢な素材感を感じて欲しい」 釉薬の面積を極力少なくして土そのもののを表現することで普段の器では表現できない味わいをや手触りを感じて欲しいです!通常の器は釉薬を施すことにより吸水性と強度をあげていますが、TAJIMIシリーズの土は釉薬を使用しなくてもしっかりと焼き締めて磁器化しているので食洗機・電子レンジが使用できる耐久性を兼ね備えています。
ただ、カッコよくもチャリスはデザイン的に角が尖っているので取り扱いには気をつけてください笑 過去に一度もないほどのキレキレ具合ですから…
使えば使い込むほどに表面にテカリが出てきて味わい深くなってきますよ。幼少の頃に作った泥団子のように... 
土の色は窯の焼き加減によって変化が生じる事があります。これらは個々に色が異なりますが焼き物の個性として捉えて欲しいですね。

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猫の器を作ることについてどう感じていますか?

猫ちゃんが人間と同じ器を使って、ご飯を食べていることは嬉しいですよ!今までペット用の食器をあまり作っていなかったのですが品質という意味では猫も人間と同じだと思ってもらい、丸朝のような耐久性や品質を問われるメーカーに依頼がくることは驚きでもあり、やりがいもある。なんでもいいってわけではなく、猫を通じて器の良さも認知されてきたのかなと思う。

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最後に丸朝製陶所の強みを教えて下さい。

やっぱり耐久性がある器を作っていることです。あとは品質の安定度。山から掘ってきた土を商品の原料として使用していることもあり、品質が安定し難いです。だからと言って妥協はせず一個でも良い商品を作る思いが私達スタッフにはあります!
世の中には耐久性が低い食器が多いです。また温度が低いと器は不純物が出やすく割れやすい。高温で焼き締めることによって不純物を焼きとばして少しでも体に良いものにしていく。
業務用食器としても使用して頂いていることはお客様に安心してもらえると思うし、猫にも同じように安心してもらえる器作りはしてます。最近は海外から品質の良い商品が沢山入ってきていますが、私達スタッフは全員この地域から雇用したスタッフであり、地場産業を残したいという思いと培ったきた技術と伝統を後世に繋ぐ役目も持っています。そして少しでも地域が良くなるようにmade in Tajimi Japanで貢献したいですね!
OEMメーカーとして様々な磁器商品の製作していますがお客様が作りたいと思う形、作りたかったけどできなかった...などのそう言った要望に応えて、喜んで頂けることが僕も含めスタッフ全員のやりがいとなっています。
自分たちが作りたい商品を作る会社ではなく、お客様の作りたいものを形にする会社です。

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