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    My Cat, My Home #07 | ちくわとおこげと、ゆっくり流れる日々。

    愛知県在住の美沙子さんは、小型印刷物のデザイナー。 夫の智之さん(WEBデザイナー)と、二匹の猫・ちくわとおこげと暮らしています。 やわらかな光が差し込むリビングで、猫たちはそれぞれお気に入りの場所へ。 静かに流れる時間の中に、日々の幸せが宿っているようです。 美沙子さんは以前、雑誌『&Premium』のWEBサイトでも猫との暮らしを綴っていました。 その世界観のままに、猫たちと過ごす穏やかな時間が、この家にも広がっています。

ふたりと二匹の、はじまりの記憶。

ちくわ(白三毛)と出会ったのは、5年前のこと。その頃、私たち夫婦は三毛猫のひじき(ひーちゃん)と暮らしていました。結婚して少し経った頃、もう一匹、できれば保護猫の三毛を迎えたいと思い、ネットで里親募集のページを眺めていたときに見つけたのが、ちくわです。

淡い配色に、少し汚れた毛。どこか怯えているような表情。理想に描いていた三毛猫とはまるで違うのに、なぜか目が離せませんでした。その週末に面会の予約を入れ、「焼きちくわみたいな柄だから、ちくわにしよう」と名前を決めて出かけたことを今でも覚えています。

それから数ヶ月後、ひーちゃんが病気で亡くなりました。悲しみの中でしばらくは、新しい子を迎える気持ちになれませんでした。けれど、遊びたい盛りだったちくわの姿を見て、「ひとりでは寂しいかもしれない」と思うように。

そうして出会ったのが、おこげ(黒三毛)です。たまたま近くのブリーダーのもとで目が合った瞬間、「ひーちゃんだ…!」と、思わず声が出てしまったほど、似ていました。本来はブリーダーのもとに残る予定だったおこげをお願いして譲ってもらい、家族がふたたび、ふたりと二匹になりました。

性格も見た目も違うけれど、心地よい距離感で。

ちくわは、短いあんよとふっくらした体つきが愛らしい女の子。その姿から、私たちは愛を込めて「ちんちくりんのバインバイン」と呼んでいます。性格はおっとりしていて、とても真面目。遊ぶ順番をきちんと待ち、いたずらをするおこげを「こらっ」と叱ることも。イエローからグリーン、ターコイズブルーへと変わる瞳は、その穏やかな性格を映すように澄んでいます。

一方のおこげは、まるで“平成ギャルメイク”のような個性的な顔立ち。好奇心旺盛で人が大好き。いつも足元でお腹を見せながらくねくねしています。また、夫婦の会話にもよく参加するおしゃべり上手。お気に入りのおもちゃを投げると、犬のようにくわえて戻ってくることもあります。

性格も見た目も対照的な二匹だけれど、どちらも甘えん坊で人が好き。あまり仲良くないはずなのに、いたずらの時だけは息ぴったりです。

猫の場所も、人の場所も、ひとつの空間の中に。

料理の下ごしらえをしているとテーブルの上から見守り、洗濯物を畳んでいると、タオルの山に埋もれて眠っていたり。いつも、どちらかが人のそばにいます。また、夫のオンラインミーティングにこっそり参加していることもあるんです。

特にちくわは筋金入りのストーカーで、トイレやお風呂までついてくることも。目が合うと、思わず笑ってしまう──そんな日常が、この家の風景になっています。

美沙子さん夫妻が心がけているのは、「猫用・人用」と区別をつけないこと。どちらも自由に過ごせる空間であることを大切にしているそう。実際、猫たちは専用のベッドやタワーよりも、人が使ったあとのソファや椅子、化粧台の上など、“人の気配が残る場所”でくつろぐのが好きなのだそうです。

好きなものと、猫と。心地よく調和する空間。

美沙子さん夫妻の住まいは、ふたりの「好き」がゆるやかに混ざり合った空間。民芸や和食器のような落ち着いたものから、北欧のやさしい雰囲気のもの、そしてイギリスのプロダクトやミッドセンチュリーまで。テイストやブランドにとらわれず、どちらの好みも自然に調和しています。

部屋づくりのベースにあるのは“三毛猫配色”。白・黒・茶の組み合わせが昔から好きで、「なぜかこの配色を見るとほっとする」と美沙子さんは話します。家具や小物もその色味で統一されていて、猫たちの毛色と呼応するように、やわらかな統一感が漂っています。

猫たちが自由に動けるよう、行動範囲には余白を多く。好きなものを飾るときは、できるだけ“吊るす・掛ける”ことで、猫たちの安全と自分たちの楽しみを両立させています。

部屋のあちこちには、小さな工夫が散りばめられています。かつて本物をかじられてしまった経験から、植物はすべてフェイクに。花瓶やオブジェは倒れないよう固定し、猫の導線にあるコンセントは隠して保護。そんな配慮の積み重ねが、今の落ち着いた空間をつくっています。

お気に入りのものと過ごす、静かなよろこび。

夫妻の部屋には、時間をかけて集めたお気に入りのものが並びます。どれも「暮らしの中で自然に使えること」を大切に選ばれたものばかりです。

最初に紹介してくれたのは、デンマーク・Hanbjerg Møbelfabrik製のヴィンテージライティングビューロー。
「引っ越したら絶対に置きたい」と決めていた家具で、今は化粧台として使っているそう。取手や脚のコロンとしたフォルムに惹かれ、一目惚れで迎えたもの。家の中で唯一“飾る”ことができるスペースでもあり、自然とこの場所がいちばんのお気に入りになったといいます。

次に挙げてくれたのは、陶芸家・栁本美帆さん(Atelier bellevoile)の器。
もともと作家ものの器が好きで、陶器市や窯めぐりをよくしていた美沙子さん夫婦。夫の智之さんが碧釉のマグカップを気に入って購入したのをきっかけに、その深い青に魅了され、少しずつ増えていったそうです。氷裂貫入の繊細な表情も美しく、日常の中で静かに存在感を放っています。

そして、Søholmのヴィンテージテーブルランプ。
こちらも「引っ越したら置きたい」と決めていたひとつ。和の雰囲気にも溶け込む柔らかな佇まいが気に入り、長く使っている器と似た空気を感じたのだとか。時代も国も違うのに、どこか通じるものがある──そんな感覚が、この空間に静かな統一感を生んでいます。

最後に紹介してくれたのは、夫・智之さんのお気に入り。
ANGLEPOISEのフロアライトは、ファッションデザイナーPaul・Smith氏が所有する自動車と、同じ配色のコラボアイテムなのだそう。同じくイギリスの工業製品から生まれたAlex Moultonの自転車を照らす空間は、隣の作業部屋から、ふと横に目をやった先にあります。

エントランスの壁一面に掛けられた大きなタペストリーは、美沙子さんが選んだもの。もともとはリビングに使う予定だったそうですが、実際に飾ってみると想像以上に存在感があり、現在の場所に落ち着いたといいます。
イームズのプライウッドモビールとの組み合わせが、空間に軽やかな動きを生んでいます。

“好きなものを眺めながら仕事ができる”──そんなささやかな贅沢が、日々の原動力になっているようでした。

猫と暮らして、やわらかくなった暮らしのリズム。

猫と暮らすようになって、暮らしの“きれいさ”への感覚が少し変わりました。以前は整っていないと落ち着かなかった部屋も、今では、少し散らかっているくらいがちょうどいいと思えるように。お気に入りのおもちゃはいつでも遊べるように出しておきたいし、自分の服の上で気持ちよさそうに眠る姿を見ると、つい脱ぎっぱなしにしておきたくなるんです。

家具やファブリックのキズやほつれも、いまでは「想定内」。むしろ、その跡が愛しい思い出になっています。

そして気づいたのは、猫たちが驚くほど豊かな表情と声を持っていること。まっすぐに感情を伝えてくれる姿に、“ちゃんと会話ができる”という確かな実感があります。あくびやくしゃみ、いびき──そんな小さな音にさえ、「生きている」を感じられる。猫たちの無防備な姿に、自然と心がやわらかくなっていくのを感じます。

“いま”を大切に、猫と暮らしを重ねていく。

猫たちと過ごせる時間は、思っているよりずっと短い。だからこそ、何かを求めて寄ってきたら、なるべく手を止めて向き合うようにしています。その何気ない時間の積み重ねが、日々の幸せそのものだから。

猫との暮らしに、少しずつ取り入れたいものたち。

最後に、美沙子さんに気になっている&CATのアイテムを聞いてみました。
「気になっている商品はたくさんあるのですが……」と笑いながら、まず挙げてくれたのは CHATON BOWL
「うちの猫たちは足が短めなので、台座が低めなのが嬉しいんです。インテリアにも馴染みそうなデザインで、在庫が復活したら購入を検討しています」とのこと。

もうひとつは CARRY TOTE BAG
「デザインがとってもかわいくて、肩にかけられるのも嬉しいポイント。今使っているキャリーがボロボロになったら、次はこういうおしゃれなものにしたいなと思っています」。

「&CATのアイテムは、猫のためというだけでなく、人の暮らしの中に自然と馴染むところが好きです。少しずつ、ゆっくりと、暮らしに取り入れていけたら」と犬飼さん。

そんな言葉からも、この家の穏やかな時間が感じられました。

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